世界三大映画祭にはカンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭があります。
その一つであるカンヌ国際映画祭(5月開催)で「ドライブマイカー」の監督である濱口竜介さんと同じく脚本を務めた大江崇允さんが日本人として初めて脚本賞を受賞されました。こちらが「ドライブマイカー」の予告動画になります。
第74回カンヌ国際映画祭
コンペティション部門
✨正式出品✨
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原作 #村上春樹✖️監督 #濱口竜介
主演 #西島秀俊
『#ドライブ・マイ・カー』90秒予告妻との記憶が刻まれた車。
辿りつく場所──。𝟖.𝟐𝟎(金)𝐑𝐎𝐀𝐃𝐒𝐇𝐎𝐖🚘
🔗https://t.co/7JP2siBcKt pic.twitter.com/jkQqFmNkyl— 映画『ドライブ・マイ・カー』 (@drivemycar_mv) July 10, 2021
カンヌ国際映画祭1回目の開催年は1949年でそれから2020年までの間(71年間)日本人の受賞者はいませんでした。
映画「ドライブマイカー」には原作があるみたいですが、その原作の世界観をどのように表現してこのような栄誉ある受賞に至ったのでしょうか?
今回は「ドライブマイカー」の原作、監督の濱口竜介さんの経歴をご紹介すると共に、どのようにして受賞まで至ったのかをまとめてみました。
ドライブマイカー :原作
ドライブマイカーの原作は村上春樹の「女のいない男たち」(2013/12~2014/3まで『文藝春秋』で連載された)という連作短編小説の1つになります。
作品概要
家福は俳優で、台詞の練習をするために舞台に出演するときは車を運転して仕事場まで行っている。ところが接触事故を起こし、運転免許停止となった。同時に検査で緑内障の徴候が見つかり、事務所からも運転を止められる。そこで自動車修理工場の経営者である大場が、運転手として若い女性を推薦してくれた。2日後、黄色のサーブ900コンバーティブルの助手席に乗り、女に近くを運転してもらった。女の名前は渡利みさきといった。みさきは翌日から家福の専属運転手となった。
家福は助手席に座っているとき、亡くなった妻のことをよく考えた。女優の妻は時折、彼以外の男と寝ていた。家福にわかっている限りでは、その相手は全部で4人だった。
首都高速道路の渋滞中、みさきは家福に「どうして友だちとかつくらないんですか?」と質問する。家福は「僕が最後に友だちを作ったのは十年近く前のことになる」と答える。
妻が亡くなって半年後、テレビ局で高槻という名前の俳優と顔を合わせた。家福の知る限りでは、高槻は妻が性的な関係を持った男たちのリストの末尾に位置していた。翌日、二人は銀座のバーに行き、友だちになった。以後、都内のあちこちのバーで酒を飲み、あてもなく話をした。
その夜二人は根津美術館の裏手の路地の奥にある目立たないバーで飲んでいた[注 2]。高槻が話した言葉は、曇りのない、心からのものとして響いた。ほんの僅かなあいだかもしれないが、その隠された扉が開いたのだ。それが演技ではないことは明らかだった。それほどの演技ができる男ではない。
出典:wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC_(%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%98%A5%E6%A8%B9)
簡単に言うと
主人公は免許停止になった経緯から専属運転手をつけるようになりました。その専属運転手の女性は主人公の娘と同じくらいの年齢(生きていたら)でした。その女性とドライブ中に話す中で、死んだ妻のことを回想し、「なぜ彼女は死ぬ前に自分と比べて魅力的ではない男と寝たのか?」という心にいまだに引っかかるものを自覚します。
運転手の女性の生い立ちや「考えてどうにかなるものではない。のみこんでただやっていくしかない。」という言葉を聞く中で、自分の心の葛藤に折り合いをつけるしかないことは解りつつも、折り合いをつけたくない・つけられない主人公の心の描写を描いた作品です。
村上春樹の作風・世界観
村上春樹さんは数々の有名作、受賞作を生み出し、アメリカでも大きな影響力を持つとされるベストセラー作家です。
村上春樹さんの作品の特徴として挙げられるのは平易な文章と難解な物語ということです。
村上さんはジャズに親しみがあり、リズムを大事にしています。それは文章においても同じで、心に訴えかけるために読みやすくテンポの良い文章を書くように心がけているみたいです。
難解な文章を書くのは「論理」ではく、「物語」として届けるためであり、
それは物事の事象に論理を明確につけないことで言葉では説明できない心の奥深そこを表現することにつがるということです。
まさに「ドライブカー」も主人公の心の葛藤を描くために明確な理由等は描写されておらず、村上さんの作風が表れている作品ですね。
ドライブマイカー :濱口竜介さんの経歴
「ドライブマイカー」の監督である濱口竜介さんは
神奈川県出身で年齢は42歳(2021/7/18時点)
東京大学文学部卒業の後、助監督やアシスタントディレクターを経て、東京芸術大学大学院映像研究科に入学。2008年に卒業後から自身が監督を務めて数々の作品を制作。
多くの映画祭で受賞作を出されていますが、
近年ではテレビドラマ、映画のどちらにもなった「スパイの妻」の脚本を担当し、第94回キネマ旬報ベストテンの脚本賞を受賞しています。
また、2021年には「偶像と想像」が第71回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門にて審査員グランプリを受賞しています。つまり、今回のカンヌ国際映画祭で脚本賞受賞したことにより、世界三大映画祭での連続受賞になります。
ドライブマイカー 脚本賞の受賞理由
ドライブマイカー 脚本賞の受賞理由:濱口竜介の作品への向き合い方
濱口竜介さんが脚本を担当した作品の中に「スパイの妻」がりますが、完全オリジナルで原作はありません。
「スパイの妻」は国家機密を知ってしまった夫が反逆者と疑いの目で見られる中でも、夫を信じ共に生きていく妻の姿を描いた映画です。
保守的な日本で、国家機密を取り上げる独特の感性と綿密なストーリーの構築が出来る方は中々いないと言われています。
また、ベルリン国際映画祭でグランプリを受賞した「偶像と想像」において
ジャンフランコ・ロッシ監督ら審査員たちは、
「通常であれば会話や言葉が終わる場面が、この映画では始まりに当たる。そこから発展する深さに、観る者は驚き、当惑させられる。濱口監督が織りなす言葉は本質的なものであり、音楽であり、素材である」
と評価しています。
ベルリン映画祭会期中の取材において、恋愛要素が含まれている作品が多いのは
感情を表現しやすいというのも一つの理由だと答えており、それでいて着地点は別の所に持っていきたいと語っておられます。
また、現実にこういう人がいるかもしれないというような人が壁にぶち当たりながらも気づけばこんなところまできてしまった
を物語に出来たら理想だと言われています。
そして壁にぶつかり苦悩する個人の感情を描いたことで結果的に日本の社会を表現したように伝わったのではないかと取材に答えられていました。
ドライブマイカー 脚本賞の受賞理由: 原作の世界観を生かす緻密なストーリー構成
前述したように濱口竜介監督は独特の感性と綿密なストーリーの構築が出来る方です。また、登場人物の特徴からそのひとがどのように考えて行動するのかということに重点を置かれています。
つまり、村上春樹さんが描く「ドライブカー」の世界観を壊すことなく、読者が想像していた部分を独特の感性と綿密なストーリーの構築で表現したのではないでしょうか。
そして結果的にカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞できたのでしょう。
まとめ
今回の内容をまとめると
ドライブマイカーの原作は村上春樹の「女のいない男たち」(2013/12~2014/3まで『文藝春秋』で連載された)という連作短編小説の1つ
村上春樹さんが描く作品の特徴として挙げられるのは平易な文章と難解な物語(世界観
ドライブマイカー 脚本賞の受賞理由は
村上春樹さんが描く「ドライブカー」の世界観を壊すことなく、読者が想像していた部分を独特の感性と綿密なストーリーの構築で表現したから
になります。
ドライブマイカーは2021/8/20から全国公開予定みたいです。どのような表現がされているのか本当に気になるところです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。